2007年4月29日日曜日

ドッグラン宗像

この家に住みたいと言い出したのは彼女だった.

ある日のんびりしていたところにいきなり彼女がやってきて,家を見に行こうという.
家はどうでもよかったけど,おいしいご飯をついでに食べようというので,彼女の運転する車で今の家にやってきた.

家は小規模な市の高台にたつ一軒家で,緑に囲まれた環境でなかなかいい雰囲気だった.
ふと彼女の方を見ると,もうここに住むことを決めていたようで,もう俺の荷物も降ろし始めていた.
強引なやつだなと思ったが,特に反対する理由もなかったので,そのままここに住むことにした.

住み始めてみると,なかなかいい家である.
部屋の間取りは4LDKで,いくつかの部屋を物置にしても十分の広さがある.
リビングにはソファーがあるのだが,このソファーが思いのほか気持ちよく,このソファーの上で昼寝をするのが至福の時間である.
なによりいいのは庭が広いことで,走り回っても大丈夫ぐらいな広さがある.
周りの家にはこんなに広い庭はないので,かなりうらやましがられているようである.

そういえば,家にいる居候を紹介するのを忘れていた.
この居候も彼女がつれてきたやつで,引っ越してきた時からずっと一緒にいる.
最初から一緒に住むのは少し嫌だったのだが,彼女が気に入っているらしいのでこのときも反対はしなかった.
こいつは,早朝や夜は家の中にいて一緒にのんびりしたりしてるのだが,日中は外に出されている.
外でも結構快適に過ごしているようである.
(昼は顔を合わせることが少ないのでよく知らない.)

俺の日課はこの居候を毎朝散歩に連れて行くことなのだが,こいつは結構な早起きで,いつも俺より早く起きてきて散歩に行こうとせがむ.
しかたがないので,起きだして散歩に行くのだが,毎日行くのは結構辛い.
まあ,体力維持にもなるので,しかたなくつきあっているという感じである.

そんな生活だが,不満がないと言えば嘘になる.
暮らし始めてわかったのだが,彼女は結構命令するのが好きで,あれをやれこれをやれとかなりうるさい.
気持ちよく和室で昼寝をしていたら,掃除をするからどけという.
食欲がない時にご飯を食べなかったら,食事を口の前までもってきて,食べろ,という.
しかも,なぜか俺が勝手に外出するのを嫌がり,たまに目を盗んで家を抜け出そうとすると,めざとく見つけて連れ戻したりする.
身の回りの世話をしてくれるからしかたがないかと半ば諦めムードだが,結構辛いものある.

そんなある日,ゴールデンウィークにどこかに行こうと彼女が言いはじめた.
どこに行くかというと,居候を連れて今はやりのドッグランに行ってみようと言う.
ドッグランというのは,犬がリードなしで自由に遊ぶことのできる囲われた広場である.
眠かったのであまり行きたくはなかったが,彼女がどうしてもというので,居候と一緒に仕方なく行くことにした.

やってきたのは,ドッグラン宗像という場所である.
このドッグランは,福岡でも最大級とのことで,結構広い.
しかも,かなり急斜面の山になっている部分もあって,急な斜面を犬が走り回れるというのが,売りである.

ドッグランの囲いの中に入ってみるとかなりの先客が既にいる.
ここに来るのは始めてで,こういう場所では先客に挨拶して回るのが流儀なんです,と係員がいうので,とりあえず,全員に挨拶をしてまわった.
まあ,新参者なので,歓迎されてるのやら歓迎されてないのやら,といった感じである.

そのうち,うちの居候が山の斜面の方に行こうと言い出した.
少し斜面を登って上の方に行ってみたいらしい.
俺はおとなしくついて行くことにしたが,彼女は靴が悪いのでやめとくと,下の広場に留まった.
上からみると,他のお客とおしゃべりをしている.女ってのはほんとにおしゃべりな生き物だな.

かなりの急斜面だったので,上の方に行くのはかなり骨がおれた.
頂上まで来てみると,下の方はぜんぜんみえない.
もっと頂上にいってみようと木をよけて上ろうとした瞬間,木の陰にいた別のお客と鉢合わせしてしまった.
かなり高級そうなやつを連れているが,笑顔のかわいい子である.

あまりに近づき過ぎてたので,そのまま無視するのも変かと思い,軽く挨拶してみる.
すると,向こうもかわいい笑顔で返事を返してくれた.
なんでも,この近くに住んでいるらしく,毎週ここに来ているらしい.

たわいのない話をしているうちに,ふと,この子の体からいいにおいがすることに気がついた.
なにをかくそう,実は俺はにおいフェチなのだ.
散歩中にかわいい子とすれちがってりすると,ふと近寄って匂いをかいでしまう.
今日のこの子は香水などはまったく使ってなかったが,逆にこの体臭のみの香りがたまらない.

ふと気がつくと,においをかぐことに夢中になるあまり,ほとんど顔がくっつく程に接近していた.
まずいと思い,相手の顔をみたが,相手もまんざらでもないようで,俺の顔をじっとみている.
ひょっとしてこれは...と思い,更に近づいてみる.
が,相手は嫌がるでもなく,逆に向こうも俺にもっと近づいてくる.
おぉぉぉぉぉ,誰も見てないことだし,抱きしめてみようか...


「すいませ〜ん,うちの犬,すぐ他の犬と遊びたがるんですよ〜」
「いえいえ,うちの犬も愛想だけはよくて...こら!こっちに来なさい.」


なんでひっぱるんだよ〜
もうちょっとであの子(ポメラニアン)と抱き合えたのに〜
せっかくドッグランに来たんだから,自由に遊ばせて欲しいワン!

ちくしょう,あの子(ポメラニアン)に会うために,ぜったいまた来てやる.
でもそれには,うちの居候には愛想よくしとかないといけないか.
なんせ,実はうちの家のボスは,このリードを引っ張ってる居候らしいからな.
また来るためには,今日は言うことを聞いとくワン!




本日のブロガー:  コロ(雑種)



P.S. しまった,そういえばコロはメスだった...

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