2007年1月20日土曜日

油山山荘

福岡に住んで10年近くになるけど,そんなふぐは好きじゃない.

普通の夕食で食べる,って感じではないし,みんなで飲みに行くときに,今日はふぐ屋にしよう!ってな話になることも少ないし.

ここで断っておくと,ふぐ,といってもいろんな種類がある.
どんなところでも,単に"ふぐ"って書いてある場合は,サバフグとかの種類のわからないふぐである.
そこらへんの居酒屋とかで,フグの唐揚げって書いてあったり,定食で3000円ぐらいの安いやつは全部この部類に入る.

もう少し値段が高いやつには,"とらふぐ"と書いてあるはずである.
ふぐの中では,このとらふぐが最も味がおいしいとされているので,いわゆるふぐの中では値段が最も高い.
だいたい,コースで5000円ぐらいが相場で,ちょいとした懐石料理屋さんに行くと,一人10000円ぐらいのセットになる.
ただし,"とらふぐ"としか書いてないときは,ほぼ100%が養殖のとらふぐで,まあ,世の中に出回ってるとらふぐの8割は養殖ものらしい.

そして,そして...
トラフグのなかでも最高級品が,"天然とらふぐ"というやつである.
まあ,天然トラフグを出す店はかなり限られていて,'てっさ(ふぐの刺身)'にしろ'てっちり(ふぐの鍋)'にしろ,そのへんの居酒屋さんでメニューに載ってるようなものではない.
だいたい,天然とらふぐコースとなると10000円〜30000円というのが相場である.

そんなふぐだが,今まで食べたのは,ほとんどがわけのわからんふぐだった.
が,2回だけとらふぐを食べたことがある..
一度は,かば田の通信販売で,売ってる冷凍のてっさとてっちりのセットを実家に送って食べたときで,なんか味がないなぁ,と思ったぐらいのうすらぼんやりした印象しかない.

もう一度の経験は,忘れもしない,門司の有名なホテルのセットプランになってた夕食のふぐコースである.
この夕食は,ホテル内で食べるのではなくて,門司の商店街の中の某割烹料理屋(特に名は伏す)で食べる様になっていた.
門司という下関に近いふぐ所で食べるので,それはそれは期待して行ったら...
もう2度と行かんぞ,あの店にだけは,って感じ.
嫁さん曰く,"腐ってるよ?これ."
あきらかに冷凍のふぐで,確かになんか変なにおいがしていた.
この店は団体旅行の夕食とかによくセットになってる店なのだ柄,実は札付きの店らしく,後日,同じ商店街の別の居酒屋の大将に聞いたら,
"あれは門司の恥だ"
ということらしい.気をつけましょう.

そして,今回3度目のとらふぐ挑戦となったのが,油山山荘である.

この油山山荘は基本的には割烹旅館なのだが,福岡の人には,冬のふぐコースが有名である.
なぜかというと,天然とらふぐのコースが,なんと,1万2千円から食べられるというからびっくり.
天神や中洲で同じものを食べたら,2万円ぐらいのコースになるんじゃないかと思ってしまう.

今回,この油山山荘にお邪魔したのは,妻の親戚の納骨後の会食に運転手で参加ということなので,お酒を飲むことができない分,料理を味わってやろうと密かに意気込んでいた.

しか~し,なんでこんな場所に建てたんだろうと思うような立地なのだ.
油山いうのは,その名の通り福岡では夜景で有名な山である.
近くには,動物のいる公園もあったりする.
店にたどり着くためには,曲がりくねった細い山道を通らなければいけない.
なのに,ふぐが名物の割烹旅館で,しかも結構予約が取りづらいという人気店である.
商売ってわからないもんやねぇ,と感心する.

店に到着後は,着物を着たお姉さんたちが案内してくれて,個室に通されたが,店の造りはそれほど高級なつくりという訳ではなく,普通の和風旅館という趣だった.

そして,いよいよ料理だが,出てきた料理を並べてみると,
・ お通し
・ てっさ
・ ふぐのから揚げ
・ 白子の刺身(!)
・ てっちり
・ ぞうすい
という感じである.

まず,写真を取れなかったのが返す返すも残念なてっさ.
かなり高級そうな皿に一面に盛られてやってきた.
食べてみると...おぉ,これが本当のてっさというものなのか.(感動)
今まで食べてきたてっさは,どれも味と言えるものがなく,なんでこれをおいしいというのかと不思議に思っていた.
しかし,このてっさは歯ごたえがあるのと同時に,ポン酢と一緒になって身になんとも言えないうまさがある.
しかも,まったく生臭くない.この辺が天然とらふぐのよさだろうか.
わしわしと食べたかったが,今回はおじゃま虫の身だったので,遠慮していただきました.
しかし,小学1年生ぐらいの子は,ぜんぜんかまわず一皿の1/3ぐらい食べていた.
子供の口にもうまいらしい,が,いくらなんでも贅沢しすぎじゃないか.

次のふぐのから揚げはどうでもいい味だったが,白子はまたすごかった.
まず,調理する前の白子を更に入れて店の仲居さんが見せにくる.
こんなでっかいやつ見たことない!って白子だった.しかも真っ白で.
これを刺身で食べるのだが,いやうまかった.
普通白子は少し火を通すらしいが,刺身で食べてもまったく生臭みがない.
その上,白子のもつコクとクリーミーさだけが味わえる.
隣の白子好きの方はここぞとばかりに食べてたけど,僕も結構食べました.
ただし,あんまり食べ過ぎると,コレステロールとかそっち方面の危険があるからほどほどに.

最後は,てっちりが出てきてその後ぞうすいにするんだけど,この辺はあまり味に感動しなかった.
かなりおなかがいっぱいだったっていうのもあるけど,ふぐは味が淡白だから,鍋にしてもそんなにおいしくないなあというのが素直な感想かなと思う.

そんな感じで,初めてうまいと思えるとらふぐに出会えた一夜だった.
支払いを全部もってくれた妻の親戚の方に素直に感謝します.
(でも,会社の経費で落とすらしいけどね :p)
機会があればまた行きたいけど,カードは使えないので,現金を大量に持っていくことを忘れないように.