2006年12月24日日曜日

望楼NOGUCHI登別

今までの人生の中で何件の宿に泊まっただろうか.

大学生のころは,アウトドア系の部に所属していたので,キャンプと称する野宿をするのが当たり前だった.
狭いテントの中で,大の大人がひしめき合いながら酒を飲み,しょうもない話をし疲れた後に雑魚寝をするのは,体力的にきついこともあったが,楽しい青春の1ページである.
また,旅先でどうしても困ったときは駅のベンチに寝たこともある.
JRを使った北海道旅行で,帰りの寝台車の予約が取れなくて函館で2日間過ごさなければならなくなったときに,我が寝床となったのは,函館駅の冷たい軒下だった.
朝早く通勤の人の足下を横になり眺めていると,わけもなく泣きたくなったりするものである.

それから十数年が経ち,今回泊まったホテルが,望楼NOGUCHI登別である.
このホテル,まあ,少し調べてみるとわかるが,
・ 1泊2食付2名で最低50,400円の料金設定(宿泊予約サイトでもいっさい値引きなし)
・ 部屋は全室かけ流し温泉の部屋風呂付きのスイートタイプ(50平米以上)
・ 食事は贅を尽くした懐石料理を個室で賞味
という,かなり,やっちゃった系のホテルである.
路上で寝てた人間も,時が経てば,こんなホテルに泊まれるとは,感慨深い.

それにしても,ボウロウノグチノボリベツ,とは,変な名前のホテルである.
だいたい"望楼"ってなんだ?と思ってたら,これが実はちゃんと辞書には載ってる言葉である.

望楼(ぼうろう): 遠くを見るために立てたやぐら  (大辞林第二版より)

そうかなぁ,という印象である.まあ,このホテルはちょっと高台に建ってはいるが,そんなに眺めがいいわけではない.

実は,この名前を決めるときはいろいろ検討したんだよ,とか,インテリアは中国まで買い付けに行った,とかいうホテル設立の苦労話が書いてあるパンフレットが部屋にあったが,部屋においてきた.
そんなものを持って帰るほど律儀な性格ではない.

さて,このブログは備忘録なので,ホテルの印象を書いていこう.
このホテルは千歳空港や札幌市内からの無料送迎バスがあるのだが,前に書いたように,飛行機が函館についてしまったので,路線バスでホテル前に到着した.
ちょうど駐車場を通ってホテルに入っていくのだが,駐車場は東京で見るような外車ばかりである.と思いきや,端っこにジムニーも停まっている.なぜか嬉しい.

なぜか従業員は20代の若い人ばかりだが,いわゆる高級な接客でよく訓練されている感じはする.
いや,丁寧でいいんだけど...高度にマニュアル化されているって感じ.
世間話とかするのは苦手らしい.
雪のせいで函館経由で来たんだよ,みたいな苦労話をしてもあまりうけなかった.

部屋は,あまり凝った感じではなく,かなりシンプル.
いい家具をつかってるのかもしれないが...なんかねぇ...広いのはいいんだけどねぇ,って感じで感動はない.
部屋着にパジャマと浴衣と作務衣が用意してあったり,バスローブもあったり,タオルは一人当り2組ずつあったりで,その辺りは,宿泊客の要望をよくわかっているようである.
あと,バカでかい液晶テレビとDVDがあって,1階でDVDを見て楽しんで下さい,という趣向だったが,時間がなくて断念.

このホテルの売りの,温泉掛け流しの部屋風呂は...熱い!
加水して42度にしてあるらしいが,こんなん熱くて入れるかぁ!!!と,ひとりきり部屋の中で怒る.
水をかなり入れてかき混ぜたらなんとか入れるようになったが,風呂が部屋風呂にしては非常に大きいので,冷やすのも時間がかかった.

食事は,基本的に懐石料理だが,これはすばらしかった.
なにせ,食材がほとんど地場の最高級品なので.
千歳空港で1匹8万円ぐらいで売ってた高級鮭の鮭児(ケイジ)のルイベとか,口の中で溶けるような地元牛のステーキとか.
特に,新米の釜で炊いたご飯がおいしかったなぁ.
まあ,量が少ないのは懐石料理ではあたりまえなので,その辺は期待しない方がいい.

という感じのホテルだが,全体的にどう?と言われると,感想は難しい.
妻は非常に気にいったようである.
食事はすばらしい.これは間違いない.
従業員のサービスも,それなりによかった.
が,部屋が...,と書いきて,自分自身で何にひっかかってるのかがやっとわかった.

部屋が,家とおんなじなのである.

リビングがあって,寝室があって,大きなテレビがあって,ソファーがあって,風呂がある.
コーヒーメーカーや電気ケトルもあるが,実は職場で使ってるやつとメーカーも同じ.
家具も居心地はいいが,シンプルなもの.
なので,最初の写真のように,見事に部屋が日常化してしまうのである.(この写真はホテルの部屋です.念のため.)

旅行とは,ある意味,日頃目にしない楽しみ,つまり,非日常性を求めて行くものである.
それなのに,このホテルの部屋は,まさに日常そのものが再現される部屋なのである.
その辺りにこのホテルの改善の余地があるような気がしてならない.

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